金利のある世界へ
最近は政策金利の上昇などにより、長い間薄れていた金利の存在感が増しています。
今回は、その影響を大きく受ける住宅ローンを中心に、自分が思っていることを書いていきます。
その借入額は適正か
最近よく聞く住宅ローンの金利上昇。
変動金利か固定金利、どちらがお得かといった論争も以前より活発に行われている印象ですが、個人的には金利タイプより先に考えることがあると思っています。
それは、「自分の収入、資産、毎月の家計黒字額に対して、その借入額は適正か」ということです。
仮に年収の10倍まで住宅ローンを借りられるという話があっても、借りられる金額と無理なく返せる金額は別物で、金利以上に大切な前提条件でもありますが、デリケートな部分でもあり、意外に人前で語られることの少ない部分です。
自分の周りにも住宅ローンを組んでいる人はたくさんおり、それが話題になることもありましたが、借入額が適正かどうかよりも、
- 「金利0.○○%で借りられた」
- 「○千万円までローン審査が通った」
といった話になり、「低金利、高借入」=「自分の社会的信用の高さ」のように扱われ、0.1%の金利差や借入額の多さでマウントを取り合っていることが多かったです。
そういったことから、明らかに適性額以上の住宅ローンを組んでいる人もよく見かけましたし、それに加えてカーローンも組んでいる、なんてのもザラでした。
適正額というのは人により異なるので一概に言えませんが、端的に言うなら収入が減ったり金利が上がっても、生活や資産を崩さずに無理なく返済できる金額=余力を持った金額、といったところでしょうか。
当然、人生には想定外の出来事もあり、将来のリスクを全て事前に織り込むことなど不可能です。
ただ、そもそも借入前に、こういった適正額について、地に足のついた検討が十分に行われていないケースが多いように感じます。
複利と金利
住宅ローンの金利については、%云々の前にまず「数千万円という元本に対して、数%の金利を長期間支払い続ける」ことの重さを理解することが重要だと思っています。
自分の周囲を見ていると、この「数%」を軽く考えている人が多いように感じます。
長期投資では、数千万の資産を年利数%で長期間運用した場合、その複利効果は非常に大きなものになります。
住宅ローンは返済によって元本が減っていくため、投資の複利と単純に正反対というわけではありません。それでも、数千万円という大きな元本に対して「数%を受け取り続ける側」と「数%を支払い続ける側」では、お金の流れる方向がまったく違います。
言い換えれば、借金では金利が敵側に回り、資産運用では複利が味方側に回る。
この感覚を持っているかどうかは、長期的な資産形成でかなり大きな違いになると思います。
また、住宅ローンを変動金利で組み、多少の金利上昇によって返済が厳しくなってしまうのであれば、そもそも借入額が大きすぎたのではないか、とも思います。
変動金利と固定金利を比較する際、借入時点の金利だけを見れば、当然ですが変動金利の方が低く設定されています。
しかし、本来比較すべきなのは将来の変動金利(想定)と現在の固定金利です。
結局のところ、変動金利か固定金利かという選択は、どちらのリスクを取るかという問題でしかありません。
固定金利を選べば、将来金利が上がらなかった場合に、変動金利より高い金利を支払い続ける可能性があります。
一方、変動金利には元金の大きい返済初期を低金利で返済できるメリットがありますが、その代わりに将来の金利上昇リスクを自分で引き受けることになります。
変動金利を選ぶ以上、将来的に固定金利よりはるかに高金利になる想定は必要で、そうなったとしても家計が破綻しない程度の借入額に抑えておく。
それが本来の変動金利との付き合い方だと思っています。
ローン→借金
- 住宅ローン
- カーローン
- 教育ローン
- 奨学金
- スマホの分割払い
名前を変えるとマイルドな印象になりますが、いずれも「将来返すことを前提にお金を借りる」という意味では借金です。
「ローン」という言葉にはそれほど抵抗がなくても、「借金」と言い換えると急に抵抗を感じる人は多いはず…。
例えば、住宅ローンを返済しながらカーローンを組み、さらにスマホ端末を分割払いで購入している。
日常生活ではごく普通の光景に見えますが、見方を変えれば立派な多重債務者とも言えます。
ローンを組むことや、借金そのものを否定するつもりはありません。
住宅ローンによって手元に資金を残せることもありますし、奨学金によって教育を受ける機会を得られることもあります。借金には、それによって時間や機会を先に手に入れられるというメリットがあります。
ただし、どんな名前が付いていたとしても、将来の自分の収入から返済しなければならない借金であることに変わりはありません。
だからこそ、こうしたものを利用するときには、少なくとも「自分はいま借金をしている」という自覚は持っておく必要があると思っています。
住宅価格だけで判断しない
持ち家か賃貸かについては、最終的にはライフスタイルや価値観の問題になりますが、住宅を購入するのであれば、少なくても住宅にかかる総コストは理解しておくべきだと思います。
住宅にかかるお金は、物件価格と住宅ローンの利息だけではありません。
固定資産税、火災・地震保険、修繕費、マンションなら管理費・修繕積立金、さらに購入・売却時には各種手数料や税金などの諸費用も発生します。
そのため、お馴染みの営業トークである、「家賃10万円を払うくらいなら、月10万円の住宅ローンを払って自分のものにした方が得」という単純比較では不十分です。
「賃貸は何も残らないが、持ち家は資産として残る」という考え方もありますが、住宅が資産として残ることと、購入時に支払った金額がそのまま資産として残ることは別の話です。
例えば5,000万円で購入した住宅でも、将来5,000万円で売却できるとは限りません。
建物の経年劣化だけでなく、人口動態、周辺環境、立地の需要、金利環境などによって住宅価格が下落する可能性もあります。反対に、立地や市況によっては購入時より値上がりすることもありますが。
つまり、住宅を購入するということは「家賃を住宅ローンに置き換える」だけではなく、住宅という大きな資産を保有し、その価格変動リスクも自分で引き受けるということです。
さらに住宅ローンを利用するのであれば、その資産を自己資金だけで購入するのではなく、借金を利用して取得することになります。
投資という視点で見れば、自己資金を大きく上回る借金を使って数千万円の不動産を取得する、いわばレバレッジをかけた不動産保有でもあります。
一般的な不動産投資とは性質が異なりますが、レバレッジによって価格変動の影響が自己資金に対して大きくなるという点は変わりません。
「住宅は資産になる」というメリットだけを見るのではなく、「借金を使って大きな資産を保有している」という側面まで理解しておく必要があると思います。
それでも借金が全て悪いわけではない
ここまで借金についてネガティブなことを多く書いてきましたが、借金そのものが悪いとは思っていません。
重要なのは、「何のために、どのくらいの金利で、いくら借りるのか」だと思っています。
例えば、十分な金融資産を持っている人が、あえて低金利の住宅ローンを利用し、自己資金を投資に回すという選択もあります。
借入金利よりも高いリターンで運用できれば、その差が利益になります。当然、運用益は保証されないためリスクはありますが、借金を単なる「お金が足りないから使うもの」ではなく、資産運用の一環として利用する考え方です。
事業における借入も同様で、借りた資金によって金利以上の利益を生み出せるのであれば、借金は事業を成長させるための有効な手段になります。
つまり問題なのは借金そのものではなく、返済能力に対して過大な借金を抱えることや、その金利やリスクを十分に理解しないまま利用することです。
借金は使い方次第で、資産形成の足かせにもなれば、資産や事業を拡大するための道具にもなると思っています。
まとめ
色々書きましたが、住宅購入もローンを利用することも個人の自由ですし、家族構成や仕事、資産状況、価値観によっても最適な選択は変わります。
自分は土地を両親から譲り受けるというかなり恵まれた立場なので、「お前が偉そうに言うな」という声もあると思います。
ただ、自分としては「利用できるものがあるなら利用する」ぐらいの感覚です。
将来の金利がどうなるのか、住宅価格がどうなるのか、未来は誰にも分かりません。
だからこそ、未来を当てにいくよりも、多少想定から外れても問題なく生活できる余力を持つことの方が大切だと思います。
その上で、金利のある世界を生きていくには、金利と借金を正しく理解し、自分にとって適正な借入額を自分で判断できることが必要だと思っています。